投稿者「shinanokon」のアーカイブ

裏板の設置

裏板は横板と同じ材を使います。
接着ののりしろになるライニングは、表板と横板のときのそれと同じ材にするときと違う材にするときがあります。
横板と裏板は同じ材なので同系統の木材(広葉樹同士など)を使ったほうが良いという考え方と、より軽くて柔軟な針葉樹系を使いたいという考え方です。
これは楽器全体をどのような振動モードにしたいかによって変えるべきでしょう。
当然すべての材の厚さ、重さ、柔軟性で考える問題と思います。
先日の投稿の通り、今回は表板とも裏板とも同じ材でライニングしました。
裏板は中央で接いでリーフマッチとします。今回は装飾無しのシンプルスタイルです。
接いだ部分の補強に薄板を接着します。薄板は縦目、横目どちらにするときもあります。
そのとき使う薄板の性質で決めることが多いです。

接ぎ補強材の接着

接ぎ補強材の接着

裏板は薄くても強度の大きいドーム形状にします。そのため、Rのついたバーを2本から4本くらい接着して形成します。
外形はライニングより若干大きめに作っておき、接着後に成形します。

裏板バー形状

裏板バー形状

裏板バーのライニングに接する部分は切り欠いておき、その部分の横板にサイドブレースを設置しておきます。

ライニングの切り欠き

ライニングの切り欠き

裏板はスプールクランプや紐がけで接着します。将来修理がしやすいように膠で接着します。

裏板接着

裏板接着

横板の設置

曲げて整えた横板を表面板に取り付けます。
接着のため、横板の内側は木屑をよく取り除いておきます。私はウエスや揮発性の液体などを使います。コンプレッサーがあれば便利ですね。
まず横板がヒールのスリットにぴったり納まるように微調整します。スリットは鋸で切るため、左右の幅が若干違うので横板の厚さで微調整してます。
スリットの幅を広めにとり、楔を打ち込んで横板を取り付けることもあります。
ぴったり入ることを確認したらスプールクランプで仮設置します。
問題がなければこのまま接着できますが、横板の曲がり具合が悪ければ微調整が必要です。再度ベンディングアイロンで曲げて、曲げ跡がついた表面を整えなおします。
再び横板を表面板上に印してある外周線に合わせて設置してクランプします。エンドブロックに接着します。
このままだと横板はエンドブロックとヒールに取り付けられているだけなので、表面板に接着するためにライニングを接着していきます。
ライニングは断面が長方形や三角形など設計によって様々な形をしています。
ハーディーガーディーはボディにかかる負担が大きいので、三角形でやや幅の大きいものにしてしっかり取り付けます。

ライニング取り付け

ライニング取り付け


膠ですばやく接着して取り付けていきます。
両サイドともライニングの接着が完了したら、横板の裏板と接着する面を整えます。
SR化

裏板のSRに合わせます。


裏板は球面状に膨らましたいので、取り付ける横板、ヒールとエンドブロックの上部も3次元形状に削っていきます。
ここでは反鉋とサンドペーパーが活躍します。
最後に裏板とのライニングをRに合わせて少し出っ張るくらいに接着します。
裏板用ライニング接着

洗濯ばさみで圧着します。

横板の製作

一般的に横板は裏板と同じ木材を使います。
大まかにローズウッド系、メイプル系、サイプレス系に分かれます。
出したい音のイメージで使用する材を変えます。
特注ではコアやウォールナットなど別の種類も使うことがあります。
それぞれの木材の特性で大体の厚さを決め鉋で削りますが、一つひとつの材の具合などで強さが変わりますので、時々たわませたりしながら削り、最終的な厚さが決まります。
私の場合、単板で1.5mmから2mmぐらいになることが多いです。

横板の削り

横板を鉋で削っていきます。


横板を曲げるにはベンディングアイロンを使います。
バイオリン用、チェロ用、などが購入可能ですが、自作される方も多いです。
また少し大きな規模の工房、工場?ではプレス機で曲げることも多いです。
どちらにせよ木材の繊維をなるべく切断しないように徐々に曲げていきます。
曲げにくい木材の場合、曲げたい部分にスプレーや刷毛を使って水を含ませることもありますが、なるべくそのまま曲げたいところです。
横板の曲げ加工

横板の曲げ加工


コツとしては左右に揺らしながら少しづつ曲げることでしょうか。アイロンの温度は木材の種類や熟練の程度による作業スピードで変えます。
低めの温度でゆっくり作業するほうが、時間はかかりますが失敗は少ないでしょう。
横板曲げ途中

私の場合、型に合わせながら曲げます。


横板曲げ完了

横板曲げ完了


このあと曲げた際についた傷や焦げ跡をきれいにしておきます。
サンドペーパーやスクレーパーで整えます。

ぺぺ ロメロ

先日投稿したアンドレス・セゴビアはもう亡くなっているので生演奏は聴くことができませんが、ペペ・ロメロは現役で最高峰のギタリストの一人です。
ギター一家で生まれ父親に手ほどきを受けたそうで、クラシックだけでなくスペイン人独特の節回しがすばらしいです。
以前、東京文化会館でのリサイタルで聴いた、フランシスコ・タレガの名曲グラン・ホタは、その曲を弾くほかの誰とも違って独特な美しさを奏でていました。長い変奏曲ですが、始めから終わりまでさまざまな変化を楽しませてくれました。その中ではちょっとした編曲もしていたようでした。
聞いた話ですが、名器を含めたものすごい数のギターコレクションをしているそうです。
そのコレクションがあったからか、彼の子息の一人はギター製作の道にすすみ活躍してます。
録音も数多いのでそれらも楽しめますが、彼の真骨頂はライブにあると思います。

ギターのネック製作④

今回はネックとヘッドの別の継ぎ方です。
普通の重ね継ぎより精度を出すのがやや難しいですが、ハウザーやロマニリョスなど著名なギター製作家が採用している方法です。
Vネックジョイントと呼ばれている継ぎ方で、ヘッドとネックをそれぞれオスとメスにV字加工します。

Vネックジョイント

まず同じ角度に切り出します。

このままだと設定した角度で繋ぐと隙間が空くので、製図して切り欠く部分を確認します。

調整後のVジョイント

調整後のVジョイント

一種の楔としての継ぎ方ですので、切り欠くときは上面のほうが大きくなるように調整します。
隙間無く重なったことを確認して接着します。
V字の部分が出っ張るので切り落として完成です。

Vネックジョイント完成

接着痕がV型に見えますね。

ハーディーガーディーのヘッド

ヘッドをギターのネック材のシダー(セドロ)とメイプルで作ります。
木ペグを使って調弦するので、シダーだけだと柔らかすぎて穴が広がってしまうため、メイプルで補強します。

ヘッドの荒削り

ヘッドの荒削り


鑿や畦引き鋸で成形していきます。
現代的なハーディーガーディーなので、モダンな感じでシンプルにデザインしました。
木ペグの入るところを下穴を開けておきます。
ヴァイオリンペグを使うのでφ5.5くらいのドリルです。
テーパーリーマ

ヴァイオリンのテーパーリーマです。


上の写真のようにテーパーリーマで少しずつ広げていきます。
刃物が斜めに入っていきやすいのでゆっくり垂直になるよう気をつけます。
ハーディーガーディーヘッド

ほぼ完成したヘッドです。

ハーディーガーディーの軸

ハーディーガーディーの軸(アクスルシャフト)の設計及び取り付けはボディ内部の中でもっとも気を使う作業です。
軸受けとして横方向の大型バーとエンドブロックにブッシュを埋め込みます。
軸は滑らかに動かなければ弦を安定して擦ることができないので、十分にアラインに注意してこれらを接着します。
少しでも軸受けに対して斜めにシャフトが入ると動きが固くなって使いづらいものになってしまいますので、軸を嵌めたままバーとエンドブロックを接着することでアライン出しをします。

アクスルシャフト

軸をあらかじめ入れて位置決めします。


私は軸はステンレスやブラスで作ります。
今の工房には旋盤がありませんので、図面を描いて機械加工屋さんに依頼しました。
木と金属の組み合わせですので、どちらかというと木材の部品に気をつけます。温度湿度による木材の伸び縮みによって過度に軸から力を受けない工夫など、木材になるべく負担のかからない設計を心がけます。
そのほかに、スラスト方向への移動を防ぐための部材がきしみ音を出すことがあるので、その辺もパーツを工夫します。

ギターのブリッジ

ギターのブリッジは将来修理がしやすいように膠(にかわ)で表面板に直接接着します。
ブリッジの飛びが怖いので、ここで使う膠はかなり強力なタイプを使い、強めの力でクランプします。
私のギターは表面板を球面形状に膨らませているので、ブリッジの下部接着面は球面に合わせるように削ります。
3次元形状を出すのはとても厄介ですので、時間をかけて少しずつ鑿や反鉋、羽虫鉋、スクレーパー、サンドペーパーを使い、合わせていきます。
ブリッジの材質はローズウッド、黒檀、ハカランダを主に使っています。
それぞれ、その中でもバネがあって比較的軽い品質の材が欲しいところです。
ブリッジは横向きのブレースの一種としても作用するので、昔ながらの設計で製作する場合は特に柔軟性が大事だと思います。
柔らかさを考慮して全体を少しずつ削りますが、完成したブリッジは大体いつも20グラム前後になります。

ハカランダブリッジ

ハカランダブリッジ製作途中

ギターのファンブレース

クラシックギターの製作で音質的に重要な場所はいくつもあり、それらが複合的に効果を出すと考えていますが、そのなかでも表面板の設計はすべての製作家にとって特別に重要と考えられています。
表面板の強度、柔軟性、質量、硬度をもとに厚さが決まりますが、そこに貼り付けるブレースがさらに音に特徴をもたらすようです。
クラシックギターの中でも伝統的に使われているタイプは、アントニオ・トーレスなどが採用している扇形配置です。
このタイプは表面板の下部の膨らみの設計のことで、空に舞う凧の骨組みのようにバランスよくブレースを配置します。

ファンブレース

ファンブレース(扇形配置)


この写真ではブレースの中央部分が一番高く、両サイドに向かってテーパーしてます。
全部同じ高さで、サイドの際だけ高さを下げるやり方(スキャロップ)もあります。
イメージですが、同じ材料で作った場合、前者はより重厚で伸びのある音、後者は反応が早く歯切れがよい音のように感じます。
ブレースの断面形状も角型、三角型、尖頭型があります。作者がどのように計画して設計しているかで変わってきます。
私の場合は角型で接着してから鉋で高さや断面形状を形成していきます。
バイオリン鉋

小さなバイオリン鉋や鑿で削ります。


ファンブレースで使用する木材の性質によって幅、高さをその都度変えて接着するので、決まった大きさではありません。
また私の場合、ファンの数も狙った音質によって5本の場合から9本ほどまで変えます。

アンドレス セゴビア

クラシックギターを弾く人にとって一番名前の知られたギタリストはセゴビアといって間違いないでしょう。
もっぱら聴くほうだけという人に限ると、禁じられた遊び(ロマンス)を映画で奏でたナルシソ・イエペスや、ジョン・ウィリアムスのほうが録音を耳にする機会が多いかもしれませんが、好き嫌いは別としてギター音楽をクラシック音楽の一部にまで認めさせたのは間違いなくセゴビアです。
功績としては、セゴヴィアはレパートリーを増やすために積極的に他楽器の曲を編曲したり、同年代の作曲家にギター曲を作らせました。
そして残されたレコーディング音源を聴けはわかるように、テクニック、音楽性はいまだに他の追随を許しません。とくにその音楽性は本人の強力な個性同様、とても個性的なものです。その音色や独特なルバートはセゴビアトーンと呼ばれ、今でもプロでさえ真似をできずにいます。逆に言えば真似をしてでも出したい音色とも言えます。
20世紀の多くの巨匠同様、セゴビアも楽曲によってはその古典的とはいえない音楽の作り方を批判されることもあります。しかしその点を差し引いてあまりある美しい演奏を残してくれました。若い音楽家やギタリストは謙虚にそのことをもっと評価するべきではないかと思います。
セゴヴィアが使用したギターは、サントス・エルナンデス、ヘルマン・ハウザー、ホセ・ラミレスⅢ世、イグナシオ・フレタなどです。