月別アーカイブ: 2016年3月

裏板の設置

裏板は横板と同じ材を使います。
接着ののりしろになるライニングは、表板と横板のときのそれと同じ材にするときと違う材にするときがあります。
横板と裏板は同じ材なので同系統の木材(広葉樹同士など)を使ったほうが良いという考え方と、より軽くて柔軟な針葉樹系を使いたいという考え方です。
これは楽器全体をどのような振動モードにしたいかによって変えるべきでしょう。
当然すべての材の厚さ、重さ、柔軟性で考える問題と思います。
先日の投稿の通り、今回は表板とも裏板とも同じ材でライニングしました。
裏板は中央で接いでリーフマッチとします。今回は装飾無しのシンプルスタイルです。
接いだ部分の補強に薄板を接着します。薄板は縦目、横目どちらにするときもあります。
そのとき使う薄板の性質で決めることが多いです。

接ぎ補強材の接着

接ぎ補強材の接着

裏板は薄くても強度の大きいドーム形状にします。そのため、Rのついたバーを2本から4本くらい接着して形成します。
外形はライニングより若干大きめに作っておき、接着後に成形します。

裏板バー形状

裏板バー形状

裏板バーのライニングに接する部分は切り欠いておき、その部分の横板にサイドブレースを設置しておきます。

ライニングの切り欠き

ライニングの切り欠き

裏板はスプールクランプや紐がけで接着します。将来修理がしやすいように膠で接着します。

裏板接着

裏板接着

横板の設置

曲げて整えた横板を表面板に取り付けます。
接着のため、横板の内側は木屑をよく取り除いておきます。私はウエスや揮発性の液体などを使います。コンプレッサーがあれば便利ですね。
まず横板がヒールのスリットにぴったり納まるように微調整します。スリットは鋸で切るため、左右の幅が若干違うので横板の厚さで微調整してます。
スリットの幅を広めにとり、楔を打ち込んで横板を取り付けることもあります。
ぴったり入ることを確認したらスプールクランプで仮設置します。
問題がなければこのまま接着できますが、横板の曲がり具合が悪ければ微調整が必要です。再度ベンディングアイロンで曲げて、曲げ跡がついた表面を整えなおします。
再び横板を表面板上に印してある外周線に合わせて設置してクランプします。エンドブロックに接着します。
このままだと横板はエンドブロックとヒールに取り付けられているだけなので、表面板に接着するためにライニングを接着していきます。
ライニングは断面が長方形や三角形など設計によって様々な形をしています。
ハーディーガーディーはボディにかかる負担が大きいので、三角形でやや幅の大きいものにしてしっかり取り付けます。

ライニング取り付け

ライニング取り付け


膠ですばやく接着して取り付けていきます。
両サイドともライニングの接着が完了したら、横板の裏板と接着する面を整えます。
SR化

裏板のSRに合わせます。


裏板は球面状に膨らましたいので、取り付ける横板、ヒールとエンドブロックの上部も3次元形状に削っていきます。
ここでは反鉋とサンドペーパーが活躍します。
最後に裏板とのライニングをRに合わせて少し出っ張るくらいに接着します。
裏板用ライニング接着

洗濯ばさみで圧着します。

横板の製作

一般的に横板は裏板と同じ木材を使います。
大まかにローズウッド系、メイプル系、サイプレス系に分かれます。
出したい音のイメージで使用する材を変えます。
特注ではコアやウォールナットなど別の種類も使うことがあります。
それぞれの木材の特性で大体の厚さを決め鉋で削りますが、一つひとつの材の具合などで強さが変わりますので、時々たわませたりしながら削り、最終的な厚さが決まります。
私の場合、単板で1.5mmから2mmぐらいになることが多いです。

横板の削り

横板を鉋で削っていきます。


横板を曲げるにはベンディングアイロンを使います。
バイオリン用、チェロ用、などが購入可能ですが、自作される方も多いです。
また少し大きな規模の工房、工場?ではプレス機で曲げることも多いです。
どちらにせよ木材の繊維をなるべく切断しないように徐々に曲げていきます。
曲げにくい木材の場合、曲げたい部分にスプレーや刷毛を使って水を含ませることもありますが、なるべくそのまま曲げたいところです。
横板の曲げ加工

横板の曲げ加工


コツとしては左右に揺らしながら少しづつ曲げることでしょうか。アイロンの温度は木材の種類や熟練の程度による作業スピードで変えます。
低めの温度でゆっくり作業するほうが、時間はかかりますが失敗は少ないでしょう。
横板曲げ途中

私の場合、型に合わせながら曲げます。


横板曲げ完了

横板曲げ完了


このあと曲げた際についた傷や焦げ跡をきれいにしておきます。
サンドペーパーやスクレーパーで整えます。