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ハーディーガーディーのホイール

ハーディーガーディーの弦を擦る部品です。

ハーディーガーディーのホイール

今回は一枚板にしました。

石川県は山中塗や輪島塗など木工芸が盛んです。そのため轆轤(ろくろ)で木地を挽く職業の方も近くにいらっしゃいます。今回は同じ町内の方に頼んで外形を削ってもらいました。初めてお願いしたのですが、さすがに専門家ですからとても良い感じに作っていただきました。
伐ってから長く寝かしたケヤキを使ってくださったので、内部応力も取れてくるいもほとんど出なそうです。
計算していたより重量(密度)があったのでドリルで中心と円周の間を穴あけしました。安定した擦弦や操作性を保つよう、フライホイールの効果も使いたいので程よく重量バランスをとります。
外周部は組み立てた後、芯だしして最終的に削りなおすことになるのでそれ以外をオイル塗装します。

ハーディーガーディーホイール塗装

オイル塗装後

ハーディーガーディー

ハーディーガーディーは撥弦楽器ではなく擦弦楽器なのですが、昔から音色が好きなことや製作したり修理する縁があって時々作ります。
昔ながらのものだけでなく、現代的な楽器としてよみがえらしたいと思いまして特別に設計し製作してます。
この楽器は普通の木工技術以外に金属も多様するので、そのハイブリッド感も気に入っています。間違った近未来楽器のような面もあり、普段のクラシカルな製作と違って意外な面白さがあります。
今回は表面板をシトカスプルースで作ります。

割れ止め

車輪の入るスリット周りの割れ止めの加工です。


車輪の入る部分をたくさん切り欠かなくてはならないので、設計が難しいところです。
バイオリン系の弓弾きのように外側に車輪を設置するべきかもしれません。その辺は要考察です。
切り欠いた部分は割れ易いので、パーフリングを埋め込んでおきます。
スリット周りのパーフリング

半ヘリンボーン柄を埋め込みました。

楽器の型

楽器を作るときは型を多用します。
私の場合特注の楽器を作ることが多いので、その都度型を作ります。
型は経年変化が嫌なので合板やMDFで作ることが多いです。
中心線で左右対称な楽器なので表板の型は片側だけ作ります。

保管中に割れてしまった材も使います。

保管中に割れてしまった材も使います。

この写真のように、表面板用にストックしてる最中に割れてしまった材も型に使うことがあります。

ギター型

アウトラインを注意して整えます

ギターのネック製作②

次にヘッド部分を重ね継ぎします。
ヘッドの角度を決めて鋸でカットするのですが、今回はスケールが640mmなのと薄めのネックにするために若干きつめの15度に決めました。

ネック角度カット

胴付き鋸のほうが良いかもしれません

切り終えたら上下を同じ角度にしたいので、重ねて鉋かけします。

角度決めの鉋かけ

柾目具合がわかりますね

横に倒して片方をひっくり返して接着面の具合を見ます。
ネック材のすべての面が垂直になっていることが必要なので、鉋で微調整します。
最後に接着面をスクレーパでほんの少し削って凹まします。

ギターヘッド 重ね継ぎ リハーサル

垂直にします

これで接着の準備が整いました。

ギターのネック製作①

ただいま4つの楽器製作を同時進行中ですが、今日はご注文いただいたスケールが640mmのクラシックギターのネック製作についてです。
保管してあったブランク材を厚さ20mm程度に鉋をかけていきます。
今回は軽いシダー材を使ったネックにすることになりました。

ギターのネックブランク材

ギターのネック材

まず厚さを整えていきます。
ネックは必ず長さ方向に柾目に板取します。
鉋をかけていくと、ひと削りごとに表情が変わっていきます。
時々、シダー材に多い逆目が出てくることがあります。

シダー材の逆目

円で囲んだ所が逆目です

さらに削っていくと、やにも出てきました。

シダー材の逆目と脂

逆目の横の縦長の円で囲んだ2箇所です。

鉋を使って少しずつ削る理由は、このあたりにあります。
機械で一気に削ると思いがけない仕上がり面が出てきてしまうことがあるので、それを避けるためにも徐々に削って様子を伺うのです。
見た目に悪いので、脂が出てきたところはなるべく使わないように作業しながら計画していきます。

ウクレレの種類

当工房ではウクレレ製作も行っています。
製作するのは一般的にウクレレと呼ばれているハワイアンウクレレのタイプです。
もともとポルトガルの楽器がハワイに渡ってウクレレになったので、ハワイの材料であるコアを表、裏、横板に使うことが多いですが、本来使われていたスプルース系の表板はもちろん、マホガニー、メイプルなどで製作しても独特な音色になって面白いです。
ウクレレは、その大きさでソプラノ、コンサート、テナー、バリトンの種類があります。

一番なじみのあるソプラノウクレレですが、スケールは350mm程度です。プレイヤーの手の大きさで変えることもできます。
ウクレレ漫談のあのウクレレですね、小さくて弾きやすいです。
ソロ楽器としても使えますが、主にコード弾きでの演奏を楽しみたい方向けです。
もう少しハイポジションの音も使いたい方はソプラノウクレレのボディに長めのネックを取り付けたソプラノロングやコンサートウクレレをお勧めします。こちらですと少しスケールが大きくなるのでソロを弾くことが楽になります。
テナーウクレレやバリトンウクレレはかなり大きなボディとスケールになりますので、指の大きな方にも良いかと思いますが、音色がもはやウクレレっぽく無いように感じます。楽器の持つ適正テンションの関係から、バリトンの場合ギターの1弦から4弦と同じ調弦にすることもあります。

ウクレレは弦も少ないですし、小さく扱いやすい楽器ですので弦楽器を初めて弾く方にもおすすめです。
オプションでピックアップを取り付けてのアンプ出力や、スロテッドヘッド、アバロンのパーフリング、口輪なども作ります。
また上級者には、これからはスラックキーギターのように自分で好きな調弦にして演奏するのが流行るような気がします。

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オプションのスロテッドヘッドのコンサートタイプ(コア材)です。

 

ギターのネック①

わたしにとってネックはギター製作作業の中で一、二番目を争うくらい神経と労力を使う箇所です。
まさにネックですね。
材料はシダー材を主に使います。といっても表面板に使うシダーとは種類が違いますし、国産の杉とも違います。
ギター製作に使う材は外国産の木材が多く、翻訳途中で誤解を生むような表記になってそのまま定着してしまったものが多いようです。
表面板のほうはレッドシダーというヒノキの仲間です。
マホガニーは密度が程よいものはとても良いですが、わたしの設計だと少し重量オーバーなものが多いので使用頻度は少ないです。
シダーでも密度、柔らかさにばらつきがありますので、薄めのネックを希望された際は補強材を埋め込むこともあります。
補強材は欲しい重量によってカーボンや黒檀などを使います。
ネックのヘッドには横裏板と同じ材の薄板(ヘッドフェイス)を貼ることが多いです。自分の好みではありませんが、装飾のためツキ板をはさんで接着する事もあります。

肝心のサイズですが、目安として0フレットと12フレットでのネック幅、0フレットと9フレットでのネック厚さで表示します。
一般的に幅は0フレットで52mm、12フレットで62mmほど、厚さは0フレットで21~23mm、9フレットで22~25mmほどです。
ここはプレイヤーの好みでかなり変化させます。そのサイズはプレイヤーの手の大きさ、演奏スタイルでかなり変わってきます。
ネックの断面形状も平たいものが好きな方と丸みをもったものが好きな方と分かれるようです。
打ち合わせや製作途中に試奏してもらって決めることもあります。

ギターの横裏板①

クラシックギターではローズウッド系、メイプル系、サイプレス(シープレス)系が主に使われます。
単板で製作する場合、通常裏板(バック)と横板(サイド、リブ)は同じ種類の木が使われます。
設計によっては張り合わせて合板にする場合もあります。

ローズウッドはマメ科の植物で、代表的な使用材はインディアンローズウッド、ホンジュラスローズウッド、マダガスカルローズウッド、ハカランダ(ブラジリアンローズウッド)、アフリカンブラックウッドなどがあります。

メイプルはカエデ属の植物で、ヨーロピアンメイプル、ロックメイプルなどを使いますが、木目(杢)の取り方で呼ばれることもあります。フレイムメイプル、カーリーメイプルは柾目取り、バーズアイメイプル、キルティッドメイプルは板目取りです。

シープレスはイトスギ属で、私はスパニッシュシープレスと呼ばれるものしか知りません。カナディアンシープレスは種類が違うと聞いています。軽く、歯切れが良い音がしやすいので、主にフラメンコギターに使われますが、クラシックギターに使っても面白いです。

これら大まかに分けたそれぞれに木材として特性があり、また個体差もありますので、狙う音質に合わせて種類を選択したり厚さを変えて使います。

 

ギターの塗装

わたしの製作するギターはほとんどすべてセラック(シェラック)塗装です。
プレイヤーの要望でネックだけオイル塗装にすることはあります。
国産ギターでもスペインギターでも手工品で値段の高いものはだいたいセラックで塗装されています。
いわゆるフレンチポリッシュの技法ですが、製作家によって、また目指す音質によって使うセラックの種類や混ぜものを変化させます。
それらをアルコールに溶いて職人の手で少しずつ塗布するのですが、その前の段階で行う塗料の染込みを防ぐ工程、そして次の工程である目止めも軽石の粉などを使って天然素材だけで手作業で行いますので、たいへん時間がかかり、それが楽器の値段の高さにつながります。
しかしたいへん品の良い光沢を放つギターが仕上がります。

デメリットもあります。
水分に弱いので汗などふき取らずそのままにしたり、空気中の湿気が高いところに長期間置くと変質、変色したり割れてきたり塗装が剥げてしまったりします。
それでもたいへん薄い膜になるためギターの振動を妨げず音質的に有利なこと、塗膜をはがして修理が容易であることなど楽器としての利点がそれを上回って余りあると考えられます。
実際ポリウレタンやラッカー塗装の楽器は塗膜を剥がして修理、或いは再塗装するのはたいへんな労力が必要です。剥がした塗装の粉などを吸い込んでも有害ですし、その点でもセラックは天然素材で食品にも使われるほど安全性が高いものと言われていて作業も安心です。塗装の際アルコールが蒸発するのでそれを吸ってしまうのが少し心配ではありますが、今後もこの塗装を続けるつもりです。

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フラメンコギターの裏板塗装中

 

入門用のギターを選ぶ

ギターにはいろいろな種類があります。
初心者にはどれを選んだらよいかわからない方もいるかもしれません。
エレクトリックギター(いわゆるエレキですね)、アコースティックギター(アコギ)、セミアコースティックギター(セミアコ)、フォークギター、ガットギター(クラシックギター、フラメンコギター)、スチールギターなどなど…

まずは自分の弾きたい曲、やりたいジャンルによってギターを選びます。

さてその中で、もし既製品のクラシックギターやフラメンコギターを弾きたいと思った方は続きを読んでください。
もちろんはじめから良い音や弾きやすさを求めてオーダーメイドするのも良いかとは思いますし、本当は当工房の手工品をお勧めしたいのですが、続くかどうかわからないうちはあまり無理せず、ある程度自分の好みがわかってからのほうがオーダーしやすいかもしれません。

大きな楽器屋さんに行けばたくさんのエレキギターの片隅にほんの少しのクラシックギターがあると思います。その中から消極的選択をして選ぶことが多いのではないでしょうか。フラメンコギターにおいては存在すらしないかもしれません。しかしネット販売のお店でならいつでも選べますね。だから予算に合わせてポチッと購入しがちですね。

でもこれらいわゆるガットギターは生音で楽しむ楽器ですから、音質が自分のフィーリングに合っていないとつまらなくなってすぐに厭きてしまうかもしれません。なので既製品を購入される場合は試し弾きを強くお勧めします。しかも大量生産品とはいえ木でできているものですので、同じメーカーの同じ型番でも1本1本微妙に音が違うことが多いです。
クラシックギターやフラメンコギターだけを扱うギターショップが大きな街にはあると思いますので、少し億劫でも必ず足を運んでたくさんの中から選ぶと良いと思います。

クラシックギターの専門店は手工品ばかりで敷居が高いとお考えの方もいるかもしれませんが、私の経験上まったくそんなことはなかったです。専門店だけに、入門用の大量生産品のなかでも比較的程度の良いものしか扱わないお店が多いと思います。初めに初心者であることや予算を正直に告げて店員さんに一緒に選んでもらうと、満足いく買い物ができると思います。ついでに高級品の音も経験できるかもしれませんしね。
東京だとアウラさん、アンダンテさん、メディアカームさんなどが下町では有名店ですね。