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ギターの塗装

わたしの製作するギターはほとんどすべてセラック(シェラック)塗装です。
プレイヤーの要望でネックだけオイル塗装にすることはあります。
国産ギターでもスペインギターでも手工品で値段の高いものはだいたいセラックで塗装されています。
いわゆるフレンチポリッシュの技法ですが、製作家によって、また目指す音質によって使うセラックの種類や混ぜものを変化させます。
それらをアルコールに溶いて職人の手で少しずつ塗布するのですが、その前の段階で行う塗料の染込みを防ぐ工程、そして次の工程である目止めも軽石の粉などを使って天然素材だけで手作業で行いますので、たいへん時間がかかり、それが楽器の値段の高さにつながります。
しかしたいへん品の良い光沢を放つギターが仕上がります。

デメリットもあります。
水分に弱いので汗などふき取らずそのままにしたり、空気中の湿気が高いところに長期間置くと変質、変色したり割れてきたり塗装が剥げてしまったりします。
それでもたいへん薄い膜になるためギターの振動を妨げず音質的に有利なこと、塗膜をはがして修理が容易であることなど楽器としての利点がそれを上回って余りあると考えられます。
実際ポリウレタンやラッカー塗装の楽器は塗膜を剥がして修理、或いは再塗装するのはたいへんな労力が必要です。剥がした塗装の粉などを吸い込んでも有害ですし、その点でもセラックは天然素材で食品にも使われるほど安全性が高いものと言われていて作業も安心です。塗装の際アルコールが蒸発するのでそれを吸ってしまうのが少し心配ではありますが、今後もこの塗装を続けるつもりです。

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フラメンコギターの裏板塗装中