クラシックギターを弾く人にとって一番名前の知られたギタリストはセゴビアといって間違いないでしょう。
もっぱら聴くほうだけという人に限ると、禁じられた遊び(ロマンス)を映画で奏でたナルシソ・イエペスや、ジョン・ウィリアムスのほうが録音を耳にする機会が多いかもしれませんが、好き嫌いは別としてギター音楽をクラシック音楽の一部にまで認めさせたのは間違いなくセゴビアです。
功績としては、セゴヴィアはレパートリーを増やすために積極的に他楽器の曲を編曲したり、同年代の作曲家にギター曲を作らせました。
そして残されたレコーディング音源を聴けはわかるように、テクニック、音楽性はいまだに他の追随を許しません。とくにその音楽性は本人の強力な個性同様、とても個性的なものです。その音色や独特なルバートはセゴビアトーンと呼ばれ、今でもプロでさえ真似をできずにいます。逆に言えば真似をしてでも出したい音色とも言えます。
20世紀の多くの巨匠同様、セゴビアも楽曲によってはその古典的とはいえない音楽の作り方を批判されることもあります。しかしその点を差し引いてあまりある美しい演奏を残してくれました。若い音楽家やギタリストは謙虚にそのことをもっと評価するべきではないかと思います。
セゴヴィアが使用したギターは、サントス・エルナンデス、ヘルマン・ハウザー、ホセ・ラミレスⅢ世、イグナシオ・フレタなどです。
月別アーカイブ: 2016年1月
ギターのネック製作③
640mmでのギター製作依頼が急遽650mmに変更になったことと、ヘッドのデザインが変更になったので若干設計を変更します。
具体的には補強材の種類を変えることと、きつめのヘッド角度を緩和させるためマシンヘッドの取り付け位置をより天神に移動させます。
補強材は当初より梁成をサイズアップすることにして、畦引き鋸と鑿でその部分を掘り込みます。
補強材を埋め込んで取り付けます。ネック材のねじれに負けないように、ここはエポキシを使って接着することが多いです。
変更になった天神のデザインをすっきりさせるように考えて、型をおこします。
同時にギターのヘッドフェイス用の薄板を作っておきます。
この部分のデザインは最近は一枚の板をそのまま貼ることが多いのですが、今回は中央に裏板中央と同じストライプを入れるよう依頼を受けました。
厚さを調整してエコノミーバイスなどで圧着接着します。
一晩経ってからクランプを外して整形していきます。
先に作っておいたヘッド型を使って整形していきます。
この後はクラシックギターのヘッド特有のスロットを開けていきます。
ハーディーガーディーのホイール
ハーディーガーディーの弦を擦る部品です。
石川県は山中塗や輪島塗など木工芸が盛んです。そのため轆轤(ろくろ)で木地を挽く職業の方も近くにいらっしゃいます。今回は同じ町内の方に頼んで外形を削ってもらいました。初めてお願いしたのですが、さすがに専門家ですからとても良い感じに作っていただきました。
伐ってから長く寝かしたケヤキを使ってくださったので、内部応力も取れてくるいもほとんど出なそうです。
計算していたより重量(密度)があったのでドリルで中心と円周の間を穴あけしました。安定した擦弦や操作性を保つよう、フライホイールの効果も使いたいので程よく重量バランスをとります。
外周部は組み立てた後、芯だしして最終的に削りなおすことになるのでそれ以外をオイル塗装します。
ハーディーガーディー
ハーディーガーディーは撥弦楽器ではなく擦弦楽器なのですが、昔から音色が好きなことや製作したり修理する縁があって時々作ります。
昔ながらのものだけでなく、現代的な楽器としてよみがえらしたいと思いまして特別に設計し製作してます。
この楽器は普通の木工技術以外に金属も多様するので、そのハイブリッド感も気に入っています。間違った近未来楽器のような面もあり、普段のクラシカルな製作と違って意外な面白さがあります。
今回は表面板をシトカスプルースで作ります。
車輪の入る部分をたくさん切り欠かなくてはならないので、設計が難しいところです。
バイオリン系の弓弾きのように外側に車輪を設置するべきかもしれません。その辺は要考察です。
切り欠いた部分は割れ易いので、パーフリングを埋め込んでおきます。
楽器の型
楽器を作るときは型を多用します。
私の場合特注の楽器を作ることが多いので、その都度型を作ります。
型は経年変化が嫌なので合板やMDFで作ることが多いです。
中心線で左右対称な楽器なので表板の型は片側だけ作ります。
この写真のように、表面板用にストックしてる最中に割れてしまった材も型に使うことがあります。
ギターのネック製作②
次にヘッド部分を重ね継ぎします。
ヘッドの角度を決めて鋸でカットするのですが、今回はスケールが640mmなのと薄めのネックにするために若干きつめの15度に決めました。
切り終えたら上下を同じ角度にしたいので、重ねて鉋かけします。
横に倒して片方をひっくり返して接着面の具合を見ます。
ネック材のすべての面が垂直になっていることが必要なので、鉋で微調整します。
最後に接着面をスクレーパでほんの少し削って凹まします。
これで接着の準備が整いました。
ギターのネック製作①
ただいま4つの楽器製作を同時進行中ですが、今日はご注文いただいたスケールが640mmのクラシックギターのネック製作についてです。
保管してあったブランク材を厚さ20mm程度に鉋をかけていきます。
今回は軽いシダー材を使ったネックにすることになりました。
まず厚さを整えていきます。
ネックは必ず長さ方向に柾目に板取します。
鉋をかけていくと、ひと削りごとに表情が変わっていきます。
時々、シダー材に多い逆目が出てくることがあります。
さらに削っていくと、やにも出てきました。
鉋を使って少しずつ削る理由は、このあたりにあります。
機械で一気に削ると思いがけない仕上がり面が出てきてしまうことがあるので、それを避けるためにも徐々に削って様子を伺うのです。
見た目に悪いので、脂が出てきたところはなるべく使わないように作業しながら計画していきます。
ウクレレの種類
当工房ではウクレレ製作も行っています。
製作するのは一般的にウクレレと呼ばれているハワイアンウクレレのタイプです。
もともとポルトガルの楽器がハワイに渡ってウクレレになったので、ハワイの材料であるコアを表、裏、横板に使うことが多いですが、本来使われていたスプルース系の表板はもちろん、マホガニー、メイプルなどで製作しても独特な音色になって面白いです。
ウクレレは、その大きさでソプラノ、コンサート、テナー、バリトンの種類があります。
一番なじみのあるソプラノウクレレですが、スケールは350mm程度です。プレイヤーの手の大きさで変えることもできます。
ウクレレ漫談のあのウクレレですね、小さくて弾きやすいです。
ソロ楽器としても使えますが、主にコード弾きでの演奏を楽しみたい方向けです。
もう少しハイポジションの音も使いたい方はソプラノウクレレのボディに長めのネックを取り付けたソプラノロングやコンサートウクレレをお勧めします。こちらですと少しスケールが大きくなるのでソロを弾くことが楽になります。
テナーウクレレやバリトンウクレレはかなり大きなボディとスケールになりますので、指の大きな方にも良いかと思いますが、音色がもはやウクレレっぽく無いように感じます。楽器の持つ適正テンションの関係から、バリトンの場合ギターの1弦から4弦と同じ調弦にすることもあります。
ウクレレは弦も少ないですし、小さく扱いやすい楽器ですので弦楽器を初めて弾く方にもおすすめです。
オプションでピックアップを取り付けてのアンプ出力や、スロテッドヘッド、アバロンのパーフリング、口輪なども作ります。
また上級者には、これからはスラックキーギターのように自分で好きな調弦にして演奏するのが流行るような気がします。