ブリッジのギターの表面板に接着する面(裏面)を3次曲面に仕上げていくところです。

ブリッジ底面削り
スクレーパーを使うと堅木でも楽に削っていけます。
スクレーパーに使う金属板の材質や厚さによって使いやすさ、削りやすさや刃のつけやすさが違いますので、いろいろ試してみると良いかと思います。大き目の板を買ってシャーリングでせん断するとリーズナブルです。
弦の振動を表面板に直接伝える重要な部位です。
ブリッジのギターの表面板に接着する面(裏面)を3次曲面に仕上げていくところです。
ブリッジ底面削り
スクレーパーを使うと堅木でも楽に削っていけます。
スクレーパーに使う金属板の材質や厚さによって使いやすさ、削りやすさや刃のつけやすさが違いますので、いろいろ試してみると良いかと思います。大き目の板を買ってシャーリングでせん断するとリーズナブルです。
弦の振動を表面板に直接伝える重要な部位です。
弦楽器に使われる木材は世界中でだいたい同じ種類のものを用います。
したがって人気があり絶対数が少ない木材は値段が高騰するのは当然です。
そこにまた資源の枯渇や環境破壊への観点から世界での流通のルールが決められております。
そのルールでは徐々に我々弦楽器製作家の使える材が減らされていってます。
今後の製作を考えると、したがってそこには二つの選択肢があると考えられます。
ひとつはお客様に事情を説明して値段を上げさせていただくこと。
もうひとつは、新しい材料を開拓することです。
これからはその二つのやり方を混ぜながら徐々に後者にシフトして製作することになりそうです。
新しい材料の探求、時間はかかると思いますがとてもチャレンジングで楽しみです。
石川を代表すると考えているギタリストの石川征樹さんがあのアコースティックギターマガジン2016年12月号に取り上げられました。
見開き両ページの特集に加え、楽譜、付録のCDにも2曲音源が収録されてます。
コアなファンには絶大な人気を誇りますが知る人ぞ知る存在でしたので、大手音楽出版社で発行するギター専門誌にこれほどの量の誌面を割いてもらえたことは、一ファンとしてうれしいかぎりです。
ぜひ書店で、手にとっていただけたらと思います。
さらに記事の中で、愛用ギターの紹介として当工房のクラシックギターも写真つきで掲載していただいておりますので、併せてご覧いただければ幸いです。
ブレースを取り付けることで板も強くなります。
したがって表面板をより薄く作ることができます。
薄くした表面板とブレースを追加した重量増加分の兼ね合いもありますが、
弦による張力に対抗する方向にのみ強くする設計をすれば、かなりの重量削減ができます。
重量が減れば慣性が小さくなるため振動させる点、し続ける点で有利になります。
もうひとつの目的は、基音に付属する倍音成分を大きくすることです。
適切なブレースを加えることで、良いギター独特の倍音の効いた音質が得られます。
ハーディガーディの音程はキーという四角柱の棒を押す場所を変えることで操作します。
操作性は少しだけピアノに似ているかもしれません。
キーには弦を押すためのタンジェントという小さな突起を設置しておきます。
このキーを弦に当てることで振動する弦長を変化させて音程を作ります。
私の作るハーディガーディのキーは半音階の平均律ですが、タンジェントは微妙にずらすことができるため、様々な民族的な音階にすることもできます。
キーは強度のある材料で作ります。
今回は黒檀を使いました。
キー製作中
決めたスケール(弦長)からキーを取り付ける場所が自ずと決まってくるので、その位置でキーにつまみを取り付けます。
接着剤だけだと壊れやすいのでダボ打ちします。
写真のようにまとめて取り付けて後で切り離すのが合理的です。
キーボックスはカリン(ローズウッド)で作りました。
あまり動きがない材を使いたいところです。
こちらもスケールから決まった位置にキーをはめ込む四角穴を開けます。
私はボール盤で小さい穴を四角形の四隅に空けておいてから糸鋸で切ります。
キー用穴空け中
キーを全部はめた状態でキーボックスを組み立てます。
そうしないとキーの動きが悪くなり、調整にたいへん手間取ります。
キーボックス組み立て
タンジェントは製作家によって色々な形状、取り付け方があります。
タンジェント作り
これらをキーにナベ小ネジで取り付けますが、キーを割らないように必要最小限の力で締め付けます。
タンジェント設置
本当は写真のように弦を張ってから取り付けます。
ネジを緩めてタンジェントの方向を変えることで微妙にチューニングできます。
バインディングは表板や裏板の周辺に巻いてある細長い板のことです。
時には指板やヘッドにも設置することもあります。
特に表板は柔らかい木材を使うことが多いので、設置することで周辺部に事故による割れ止めの効果や湿気の入ることを防ぐ意味があります。また締め付けながら設置するため、音響的にも巻かないときと変化が起こります。
設置するときは横板のカーブに合わせてアイロンで曲げてから接着します。
バインディング曲げ
材にも依りますが、厚さは1.5から2mmくらい、幅は3.5から5mmくらいで作ります。
細長いので曲げるのは比較的容易ですが、調子に乗っていると割れることもあるので注意が必要です。
特に木材の目が斜めに切れてしまっているものは、非常に割れやすいです。
バインディング溝に合わせます。
バインディングの厚さ、幅と同じか、やや小さく横板との周辺に溝を掘ります。
溝掘りはルーターで一気に行う方法や、毛引きと鑿で行う方法があります。
あらかじめ曲げておいたバインディングを、掘った溝に合わせて修正しながら再度曲げていきます。
接着には膠やフィッシュグルーを使っています。
膠は固まりやすいので手際よく時間をかけずに作業しなければなりません。
フィッシュグルーは設置時間を比較的長くとれるので多少楽です。
接着剤を塗った溝に曲げたバインディングを嵌めたら、数箇所をテープで留めて、それから紐がけします。
紐はゴムバンドでも代用できます。
バインディング紐掛け
裏板は横板と同じ材を使います。
接着ののりしろになるライニングは、表板と横板のときのそれと同じ材にするときと違う材にするときがあります。
横板と裏板は同じ材なので同系統の木材(広葉樹同士など)を使ったほうが良いという考え方と、より軽くて柔軟な針葉樹系を使いたいという考え方です。
これは楽器全体をどのような振動モードにしたいかによって変えるべきでしょう。
当然すべての材の厚さ、重さ、柔軟性で考える問題と思います。
先日の投稿の通り、今回は表板とも裏板とも同じ材でライニングしました。
裏板は中央で接いでリーフマッチとします。今回は装飾無しのシンプルスタイルです。
接いだ部分の補強に薄板を接着します。薄板は縦目、横目どちらにするときもあります。
そのとき使う薄板の性質で決めることが多いです。
接ぎ補強材の接着
裏板は薄くても強度の大きいドーム形状にします。そのため、Rのついたバーを2本から4本くらい接着して形成します。
外形はライニングより若干大きめに作っておき、接着後に成形します。
裏板バー形状
裏板バーのライニングに接する部分は切り欠いておき、その部分の横板にサイドブレースを設置しておきます。
ライニングの切り欠き
裏板はスプールクランプや紐がけで接着します。将来修理がしやすいように膠で接着します。
裏板接着
曲げて整えた横板を表面板に取り付けます。
接着のため、横板の内側は木屑をよく取り除いておきます。私はウエスや揮発性の液体などを使います。コンプレッサーがあれば便利ですね。
まず横板がヒールのスリットにぴったり納まるように微調整します。スリットは鋸で切るため、左右の幅が若干違うので横板の厚さで微調整してます。
スリットの幅を広めにとり、楔を打ち込んで横板を取り付けることもあります。
ぴったり入ることを確認したらスプールクランプで仮設置します。
問題がなければこのまま接着できますが、横板の曲がり具合が悪ければ微調整が必要です。再度ベンディングアイロンで曲げて、曲げ跡がついた表面を整えなおします。
再び横板を表面板上に印してある外周線に合わせて設置してクランプします。エンドブロックに接着します。
このままだと横板はエンドブロックとヒールに取り付けられているだけなので、表面板に接着するためにライニングを接着していきます。
ライニングは断面が長方形や三角形など設計によって様々な形をしています。
ハーディーガーディーはボディにかかる負担が大きいので、三角形でやや幅の大きいものにしてしっかり取り付けます。
ライニング取り付け
裏板のSRに合わせます。
洗濯ばさみで圧着します。
一般的に横板は裏板と同じ木材を使います。
大まかにローズウッド系、メイプル系、サイプレス系に分かれます。
出したい音のイメージで使用する材を変えます。
特注ではコアやウォールナットなど別の種類も使うことがあります。
それぞれの木材の特性で大体の厚さを決め鉋で削りますが、一つひとつの材の具合などで強さが変わりますので、時々たわませたりしながら削り、最終的な厚さが決まります。
私の場合、単板で1.5mmから2mmぐらいになることが多いです。
横板を鉋で削っていきます。
横板の曲げ加工
私の場合、型に合わせながら曲げます。
横板曲げ完了
先日投稿したアンドレス・セゴビアはもう亡くなっているので生演奏は聴くことができませんが、ペペ・ロメロは現役で最高峰のギタリストの一人です。
ギター一家で生まれ父親に手ほどきを受けたそうで、クラシックだけでなくスペイン人独特の節回しがすばらしいです。
以前、東京文化会館でのリサイタルで聴いた、フランシスコ・タレガの名曲グラン・ホタは、その曲を弾くほかの誰とも違って独特な美しさを奏でていました。長い変奏曲ですが、始めから終わりまでさまざまな変化を楽しませてくれました。その中ではちょっとした編曲もしていたようでした。
聞いた話ですが、名器を含めたものすごい数のギターコレクションをしているそうです。
そのコレクションがあったからか、彼の子息の一人はギター製作の道にすすみ活躍してます。
録音も数多いのでそれらも楽しめますが、彼の真骨頂はライブにあると思います。